CRAFTSMAN×CRAFTSMEN Vol.3 前編/岩切 剣一郎

Craftsman & Craftsmen

こだわりと誇りを持ち日々仕事をしている方達と、
STUMPTOWNプロデューサーである菊池氏との対談
職へのこだわりや情熱をお尋ねしながら、ブーツとの関連性を探りつつ
お互いのクラフトマンシップについて語り合う。

CRAFTSMAN vol.3
カリフォルニア工務店 クリエイティブディレクター/岩切 剣一郎
<前編>

アメリカ西海岸といえば、カリフォルニア州。国内でも人気が高く、カリフォルニアテイストのモノや雰囲気やコトは衣・食・住どこにも施されている。

その中でも際立った人気と存在感のカリフォルニア工務店。その感性とアイデアの発信源でもある岩切氏をゲストに招き、話を展開。

趣味趣向や今まで見てきたもの、インスパイアを受ける先などSTUMPTOWNプロデューサ菊池氏との共通項も多く、その出会いは必然だったという。

菊池:
岩切さんと出会ったのは3-4年ほど前ですかね。元々、こういったカリフォルニアテイストなモノが好きで、実際何度も足を運んで向こうの空気感に魅了されていました。弊社でSTUMPTOWNの様な今までになかったコンセプトを持った業態のお店を考えている時期ということも重なり、ちょっと勉強させて頂こうかなと思い表敬訪問の想いも込め、エイ出版社さんにお願いして岩切さんとのお時間を作っていただいたのが最初のきっかけでした。
岩切氏:
そうでしたね。STUMPTOWN絡みでは無くて申し訳ないですが、、VANSがすごく好きで、カリフォルニア工務店でコラボレーションなどさせてもらいたいなってずっと思っていて。そういう場を作って欲しいなってエイ出版社の営業の方にお願いしていました。
菊池:
そうだったんですね。そういえば岩切さんのここまでの経緯って改めて伺ったことないですね。やっぱりずっと建築関係だったんですか?
岩切氏:
はい。学校出てからずっと建築業界にいますね。建築事務所やデザイン事務所、現場監督などを経て、エイ出版社に入社しました。
菊池:
エイ出版社さんに入るきっかけは何でしたか?
岩切氏:
元々エイ出版社が作っているライフスタイル提案の雑誌がすごく好きで、自分の好きなテイストとすごくマッチしていたんです。加えて、雑誌だけでなく飲食業態や店舗など幅広く具現化した形でライフスタイル提案を行っている事業を展開していたので、僕の考えていることや好きなことが活かせるなって思い設計事務所を開かせて頂きました。
菊池:
そうなんですね。カリフォルニア工務店さんは今6年目でしたっけ?
岩切氏:
はい。6年目ですね。
菊池:
色々な建築物を作られてきたり見てきたと思うのですが、いつ頃からカリフォルニアに魅了され始めました?
岩切氏:
実は最近といえば最近で、昔からそこまでカリフォルニアを意識してた訳ではないんです。30歳くらいの時にそれこそエイ出版社のある雑誌に取材して頂いた時にあなたの持っているメイドインUSAを見せて欲しいっていう企画で、話を聞いた時はそんなにあったかなって思ったのですが、家に帰ってよくよく集めてみるとほとんどがメイドインUSAだったんです。
車から洋服、アートなど。それで自分で再確認したと言いますか、俺ってやっぱりアメリカのモノが好きなんだなって思いました。さらに掘り下げていくと中でもカリフォルニアのモノが多くて、そこまで意識していなかった中でも自然とそこにいってたという事に気づいてからですかね。菊池さんもカリフォルニアは多く行かれていますよね?
菊池:
もうそれこそ20年前とか昔はずっといましたね。エクストリーム系のカルチャーを背景に持ったブランドが多いので、そのエキシビションがロングビーチでやっていてずっとブースを見てまわってました。向こうの商談の仕方やプレゼンテーションの仕方が新鮮でカッコよくて、参考にしていました。色々なプロダクトが出ているので商品開発の参考にもさせてもらっていました。90年代のアメリカのカルチャーやファッションは本当にカッコ良いので、今でも雑誌や色々なところで特集などをよく見ますけど、その真っ只中に居たのでまだ通用するなって感じています。自分の好きなことを、まだ突き詰められるなって。もっと言うと、好きで熱が無いと恐らく形にしてもどこか違ったりやり切れないと思っています。プロダクトが完成するまでのスピード感も違ってくると思います。そういった部分でも岩切さんにはとても共感できますし、リスペクトしています。
岩切氏:
恐縮ですね。とても嬉しいです。
菊池:
実際、このようなテイストの住居や空間はカリフォルニアにはずっとありましたよね?
岩切氏:
そうですね。昔からありますね。元々住居の空間に対する意識が高いんだと思います。
僕もサーファーズハウスという住居を提案させて頂いていますけど、インテリアもエクステリアも含め。ですが、僕が言うのもあれですけど居住空間って住んでいる人達が創り上げていくものでもあるんです。その人達のライフスタイルにあった様にですね。なので、装飾はそこまでしないでお話を伺いつつお手伝い出来たらなって考えています。昔はどちらかというと奥様と話をして設計していたんですよ。そんな中旦那さんと話す機会があって、サーファーの方だったんですけど、考えていることや要望などが僕の考えとフィットしてとても喜んでもらえたんです。そういった経験もカリフォルニア工務店を立ち上げるきっかけにもなっています。
菊池:
向こうの住居や空間がカッコよく見えるのって、親父がDIYして自分好みに創ってるからなんじゃないかなって思います。もちろんその色使いのセンスが良いって言うのもあるんですけど。ホームセンターもかなり充実していますし、そもそものライフスタイルが仕事もこなしつつ、家族との時間を充実させたいから、そのフィールドをDIYで良いものにしていくって言う考え方が強いんだと思います。
岩切氏:
確かにその通りだと思います。意識がとにかく高いですよね。それを子供の頃から見ていられる環境で育ったら自分でもやりたくなりますよね。必然というか。例えば壁面にシンメトリーにモノを飾るとかって昔の日本の住居で考えると想像もつかないですよね。ドアを塗り替えるとか。何かを自分好みに自分で仕上げていくという事が当たり前にあるんですよね。
菊池:
それが時代と共に美化されて、古いものをヴィンテージとして僕らはまた魅了されてっていう事ですね。
岩切氏:
ホントそう思います。
菊池:
僕もホームセンター行くといい風合いのペンキが欲しくなったり、何か自分でも創りたいなって思ってしまいます。
岩切氏:
菊池さんみたいにご自分で何かを創れる人は1日居ることできますよね。かなり広いし、とにかく色んなモノが売ってますからね。
菊池:
確かに。その衝動に負けてしまいよく買ってます。苦笑。モノ作りはホント楽しいですね。そのモノ作りの中で岩切さんがこだわっている部分や楽しい部分はどこにありますか?
岩切氏:
一番は実際に住んだ時にその家族の方達が笑顔で暮らせるかとか楽しめているか、ワクワクしているかという事をイメージして設計しています。例えば、デザインを重視した住居も多くあると思います。僕も昔コンクリート打ちっ放しの家に住んだ事ありますが、環境や使い勝手にストレスを感じてしまい、僕は創ってはいけないなって思いました。
使い勝手の部分で旦那様だけでなく奥様の意見ももちろん聞きながら、その方達が実際に住んでいるところを想像しながら導線や環境などを設計していきます。住んで良かった、最高だなって感じていただける様に。その上にデザインを落とし込んでいるイメージです。
菊池:
やはりそうですよね。
岩切氏:
やっぱり菊池さんもブーツをクリエイションする時にはその様なイメージされますか?
菊池:
そうですね。僕の場合はアメリカのワーカーやハンティング、消防士や警察などそれぞれのシーンに於いてどの様に使い勝手が良いかなっていうのをイメージしています。もちろん見た目的な部分もカッコよくですけど。
岩切氏:
ちなみにこのホワイツのブーツはどこのシーンに向けているんですか?
菊池:
これは山火事の時のファイヤーマンですね。スモークジャンパーというモデルで、ヘリで投下されて、歩いて火消しを行う時に使われるブーツですね。実際燃えない糸を結わいて使用しています。
岩切氏:
なるほど、だからジャンパーなんですね。糸も燃えないモノを使用しているんですね。このダナーライトはハイカーとかですか?
菊池:
ハイカーもそうですが、ハンティングの時などにも使用されています。日本に比べて圧倒的に趣味という位置付けでハンティングは人気が高いので、向こうの人間と話すとなんでハンティングをやらないんだ?ハンティングをやらない人生が想像できないって言われます。ただ、そういったシーンを想像しながらそういったスパイスをモノ作りに反映するのは面白いですね。
岩切氏:
確かに、中々何かを射留めるっていう文化はあまりないですね。だからもちろんその時に履く靴は想像できないですね。
菊池:
スニーカー文化は根付いてきたんですけど、まだ用途によって靴を履き替えるという文化は弱いのかなと感じています。なので、ブーツでもなるべくシーンを意識したモノ作りを行い、その人のライフスタイルの用途によって履き替えられる様な提案をしていきたいなと思っています。
岩切氏:
その提案とても楽しみですね!
――
お互いのルーツの話や、それぞれのクリエイションに対する想いなど、とても興味深い両者の対談。趣味嗜好がかなり近しくとても盛り上がったこの時間。後編ではさらに話が盛り上がり、岩切氏のブーツデビューのきっかけや、コラボレーションアイテムの話、それぞれの業界への想いなど。話が展開されていきます。

後編へ <4月上旬公開>

PROFILE

岩切 剣一郎 | 株式会社枻出版社 事業開発本部 建築デザイン事業部『カリフォルニア工務店』 クリエイティブディレクター
「施工の現場」から設計の世界に入り、その後独学で一級建築士に。デスクの上だけでなく、現場経験やサーフィン・バイク・ゴルフ・音楽など幅広い趣味を活かし、クライアント様のご要望を更に多くの”引き出し”で提案した空間づくりを得意とする。
菊池 孝 | STUMPTOWN DIRECTOR
STUMPTOWNのディレクションだけでなく、フットウェアやアパレルのプロデュースも手掛け、イベントの企画立案などにも携わる。
仕事以外の趣味としても家具やオブジェ制作、デザインやペインティングなどにも造詣が深く、その多岐に渡る創作意欲には各業界も注目する。
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