アフターワークを考えよう。

『仕事して疲れてないない奴は一生懸命仕事してない証拠だよ!』
一昔前よりもう少し前、筆者が学生の時分に働いていたバイト先にいた
当時で40代半ばのオジサンバイトに言われたことがある。
当たり前のことを偉そうに言って来るオジサンバイトの言うことが真実なら
今とても疲れている(様に感じる)ということは、ちゃんと頑張れているのかもしれない。
STUMPTOWNという店はこの時期になると修理も販売も急に忙しくなる。
ありがたい事に帰路はヘトヘトだ。
特にほぼ毎日、朝から晩まで履き続けている質実剛健なブーツのお陰で
正直なところ足にも疲れが来る時がある。
そこで、STUMPTOWNのスタッフは思った。
労働者が仕事終わりに履き、疲れた足をリラックスさせるのもワークブーツの役目なのではないかと。
過去のアーカイブをさかのぼると、『 これぞ!! 』 と思わせる理想形がDannerのJAPAN FACTORYに存在した。
それが昨日発売されたDanner × STUMPTOWNの別注モデルだ。

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Danner TOLEDO
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ファーストリリースは約20年前。
しかしプロトタイプは30年前には産まれていたそうだ。
発売当時の1990年代のファッションシーンではスニーカーバブルは勿論のこと、アウトドアスタイルの再燃や
はたまた局地的なブームでいうと、それまでにあったアメトラから派生した【渋カジ】といわれる
渋谷の若者を中心とした、自由でいて主張のあるアレンジが効いたスタイルも確立されていた。
そんなファッショニスタだらけで構築された群雄割拠の時代に、Dannerは他ブランドとは一線を画し、JAPAN FACTORYを構え
アメリカとは別路線で数多の名品を生み出し、そのクオリティの高さを世に知らしめていた。
その為、今でもアメリカ製のアウトドアブーツやワークブーツだけでなく
クラシックシリーズやライフスタイルなどのカテゴリーがファッションの観点においても、年代問わず大きな支持を得ている。
Dannerに隠れた名品が多いのはこんな時代とJAPAN FACTORYがあったからといっても過言ではないだろう。

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名品と呼ばれるモノにはそれ相応の理由がある。
一大ブームを起こしたとか、ロングセラーになっているとか、伝統的な製法で作られているなど様々だが
この【TOLEDO】は袋モカといってヴァンプ(足の甲)以外の革は足裏を包み込むように
一枚の革から形成されており、ライニング(内張りの革や布)がヒールカウンター以外には存在しない。
この製法を実現させるには、肉厚且つしなやかなラフアウトレザーが必要不可欠であり
さらには柔らかい足当たりを実現させる為、モカ部も熟練の職人さんによるハンドソーンが絶対条件なのだ。
以上の理由からこの【TOLEDO】という靴は大量生産が難しく、一大ブームやロングセラーは叶わなかったが
後世に受け継がれるべき名品であり、そして仕事で疲れた一家の大黒柱を暖かい夕飯で癒してくれる嫁のように
最高に優しいワークブーツだとSTUMPTOWNは考える。

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ちなみに、30年前のプロトタイプを見るとシューレースがゴムのようでゴムとは違う伸びがあった。
これも実はこの靴の優しさの1つで、締め付けが非常にソフトになるよう
特殊な繊維で出来た糸を編んで作られたシューレースだったのだ。シューレースどころか繊維にまで拘って作られていた。
この点も忠実に再現出来たことはブーツ屋冥利に尽きる。

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Dannerらしく程よいボリューム感と日本人の足にフィットし易い足当たりも倉庫の奥で眠りかけの
30年前に開発された専用の木型があったからこそ実現した。
こうしてパソコンを使って文にしてしまえば、ホンの数分で簡単なバックボーンなどは
多少お伝え出来たかもしれないが、この軽い足取りと柔らかい足当たりから感じる伝統と誇りの重みは
履いた本人しか得られないはずだ。
昨今ではモノに恵まれ過ぎてか、日頃忘れがちな職人さん達への敬意を払いつつ
家で一日中働き詰めなのに帰ったら笑顔で暖かい夕飯を用意してくれている
家内へ感謝をしながら、この【TOLEDO】を家路の逸足としたい。
。。。まっ、私、嫁いないんですけど!!


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